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ALOHAMAN IN ETERNAL SUMMER
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第29話
十五夜に泣け!兎とソーヤが餅をつく
1988年10月15日放映


 ハッシーが明日の十五夜用に団子のパックを買ってきた。十五夜といえば、ソーヤには思い出がある。八歳の頃、団子を落として泣いていた時、自分の団子を差し出し、何も言わずに駆け去っていった男の子…。
「確か、ゲンちゃんっていったっけ…」
 なんとそのゲンちゃんから、手紙が届いた。上京してきたついでに、一度会いたいという。緊張しつつ駅で待ち合わせをするソーヤ。強化スーツの出で立ちに、回りの人々の視線が痛い。
(きっとゲンちゃんも、私の変貌ぶりに驚くわよね…)
 ソーヤはちょっと、ブルーであった。
 そこへゲンちゃんが来た。ソーヤに向けて手を振っている。
「いやー、一発で見分けついたよ」 (え?)
「ホント、全然変わってないな」 (何?なんでよ?こんな格好してるのに!?
 しかしゲンの飾らぬ態度に、初恋の淡い気持ちが蘇ってきた。
(いけない!こんな……いけないわ!私は恋は捨てた身なのよ!)
 確かに、捨てる以外にはないだろう。こうして今こうやって歩く間にも、ソーヤは後ろ指を差されっぱなしだ。
「…きみ、この辺りじゃあ有名なのか?」 「え?ええ……」
 思わず目を伏せ、頬を朱に染めるソーヤの前に、コンビニ襲撃に成功して逃げだしてきたハッシーとモリッターがやってきた!先程の餅を改造した団子怪人も一緒だ。
「誰だい?この人たちは」 「………」
 ソーヤは、人気のない空き地へとゲンちゃんを連れ込んだ。
「ゲンちゃん、実は…」
「見付けたぞ!マグワイヤー!!
 やっと登場、アロハマン!!戸惑うゲンちゃん。
「あの人達はなんだい?マグワイヤーって…説明をしてくれないか?」
「そ、それは、つまり…戦いが先よ!」
 戦い、負けるマグワイヤー。その一部始終を見て、立ち尽くすゲン。
「…これで分かったでしょう?あたしたちは悪の軍団…誰もが恐れるマグワイヤーなの!」
「…分からない……なんで、あの優しかった君が…」
「時は人を変えるのよ。…これは、自分で決めた事だから」
 ソーヤ、パッと身を翻す。
「あっ、のりちゃ……!」 キッと振り向くソーヤ、
「私はソーヤ、マグワイヤーの総統だ!」
 そして、夕日に向かって今度こそ去る。ゲンは声もなく見送っていた。
「総統…泣いてるんですか?」
 無神経に尋ねるハッシーを、ソーヤは何も言わずに殴りとばした。思い出はもう、還らない。
「……団子、作るか」 「は?」 「帰ったら、団子の餅をつこう」
 あああ、今宵はひときわ悲しきソーヤ。月の兎も泣いている……


 
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