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第31話 リーダー失格!そりゃなかろう 1988年10月29日放映
朝起きた俺は、なにか違和感を感じていた。なにかがいつもと違うのだ。何か…そうだ、今朝はまだギャグを言っていないのだ。これをしないと一日が始まらないもんな。よし、それじゃ一発…あれ?変だぞ、ギャグが出ない…いや、喉まで出掛かっているのだが声にならない。鏡を見た俺は絶句した。俺の精悍な口が縫い付けられているではないか!よし、早速精悍マッサージだ!…ってギャグを考えている場合じゃない!
こら!お前等、これは一体…!?だが、ブルーが冷たい目をして言い放つ。 「その糸はケブラーで出来ている!」 なにい?悪魔か、こいつらは!!・あー、・・くまったくまったなんつってる場合じゃないっ!! うっ…、くそっ、なんだその蔑むような目は!一体俺が何をしたって言うんだよ! しかし二人は学校へ行ってしまった。なんて奴らだ。しかし俺も授業に出なくっちゃ。だが、教室に向かう途中でこれでは出席の返事も出来ないことに気が付いた。虚しくなって川原へと赴く。河辺に跳ねる鯉を見ても、向こう岸で笑い声を立てて遊ぶ子供を見ても、遠く広がる青空を見たって、心に浮かんでくるのはギャグばかり。 言いたい!誰かに聴かせたい!「俺にダジャレを言わせろ〜♪」なんて替え歌まで浮かんでくる。しかしこれじゃ『日本印度化計画』じゃなくて『日本原化計画』だ。我ながら、ちょっと、嫌。そうこう考えているうちに、町はもう夕飯時だ。オレンジ色の夕日が水面に映え、どこからともなくオフコースの『言葉にできない』なんかが流れてくる。小田和正の心境も俺と同じだったに違いない。言葉に出せない、あふれる想い。百億のギャグと千億のシャレが胸一杯にこだまする。このままダジャレになって飛んで行きたいと思った。 その時、ブレスレットのコールが俺を現実に引き戻した。なんだ、やっぱり俺が必要なんじゃないか。所詮お前等は俺のギャグのお陰で勝ってきたんだ。ところが、到着した俺を奴らはそのままカノンに詰めやがった!そうかよお前等…そんなに俺のギャグが嫌なのかよ!! 発射の瞬間、俺の頭は真っ白になった。 もはや邪念も迷いもなかった。あるのはただ、ギャグ。 心がギャグ色になった。胸の奥のそのまた奥、魂の居場所からそれは沸き上がった。溢れ出る想いは言葉にならないまま、光となって縫い目の間からほとばしった。それは一瞬だったかもしれないし、永遠だったようにも思えた。光は爆発して更に周囲を……全てを包み込んだ。 気が付くと、夕日が今にも地平線にかかろうとしていた。俺の口を縫っていた糸はいつの間にか消え…辺りは半径50bにわたって消滅していた。辛うじて生きていた二人に手を貸そうとすると、ブルーが払いのけて言った。 「お、お前なんかもう…リーダーじゃない……!」 俺は言葉もなく茫然と立ち尽くしながらもギャグを考えていた。 |
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