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第34話 原が居たからアロハマン 1988年11月19日放映
この所しばらく平和な日が続いていた。二人は普通に生活し、普通に大学へ行っていた。そうしなければやっていられないかのように、努めてそうしていたのかもしれない。
彼らはときどき幻を見た。いや幻なのかどうかも定かではなかったが、原の姿を見かけるのだ。 ある時は人込みの中、ある時は電柱の陰…。 探そうとすると、もう、居ない。誰かと話しているときも、横から原がひょいと合いの手を入れてくるような気がしてならない。それらを振り払うかのように、彼らは日常に溶け込もうとしていた。 そんなある日、再び町でゴキブリ怪人が大量発生し始めた。どうやら前の怪人が卵を生んでいたらしい。巨大なガマ口を拾って喜んでいたハッシーの懐からもぞろぞろ生まれ出てきた。ハッシー失禁。 出動し市街地へ赴いた二人は壮絶な光景を目のあたりにした。今まさに全てのゴキブリ怪人が一斉に孵化し、ビル街を飛び回っていたのだ。前回は一匹が三十匹に増えた。…だから今回は九百匹!! この世の光景とも思えなかった。だが二人は気付いていた。こいつらが卵を生む前に全滅させなければ、次は二万七千匹になる事に!! 三十匹相手に無理だったのだ。もはや勝機は十億分の一%もなかった。…が、その十億分の一に引っ掛かる想いが二人にはあった。彼さえ、原さえ居たならどうにかなるのではないか…?ここにきて二人は自分たちの偽らざる気持ちに気付かざるをえなかった。それほどまでに俺達は、心のどこかで原を信頼していたのだということに! 原の居ないアロハマンは無力だ。 いや、原の居ないアロハマンなどアロハマンではない。 ロハマンだ!つまり只 例えどんなにうっとうしくても、例えどんなにギャグがつまらなくても(演歌か)、だからこそ原は原であり、だからこそ原は強いのだ。悪は悪を、毒は毒を以て制す!原こそは最大の悪であり、毒なのだ。だが、だからこそ奴は必要だ! 善と正義の心を持った、存在そのものが悪である男、原!! 九百の怪人飛びかう中、迷いの晴れた二人はすっくと立ち上がり、天に向かって只々無心に叫んだ。 「リィィィダァァーーーッ!!」 瞬間、世の光という光全てが収束したように見え…目を開けると、ビルの屋上に見慣れたポーズの人影が! 「天上天下唯我独損!とうっ!!」 空中を飛びかう九百の怪人の背を、縦横無尽に義経の八艚飛びよろしく駆け回って手刀を打ち込み次々倒していくその姿はまさに原その人であった。 「原…!いや……リーダー……!」 確かに一度原は消滅した。存在意義がゼロになったからだ。…だが、原の存在意義はゼロを通り越して、マイナスになった!ゼロの存在意義とは、「居ても居なくてもどっちでもいい」 ということだ。だが原は、「居ない方がいい、居てはいけない」 領域にまで踏み込んだのだ!人間には誰しも悪の心がある。必要なのはそれを無視する事ではなく、それを受け入れ、どう共存すべきかという事なのだ。原が突然暴走しだしたのも、その為の蛹 さて、こうなると原は強かった。もはやジレンマもパラドックスも一切無くなった。次々倒され、増える死骸。危機を感じたゴキブリ怪人どもは、合体して群体ゴキブリになった!全長20b、しかもすばしこい!原はカノンを呼び寄せた。 「カノン、カモ(ノ)〜ン!」 那珂川の底から浮上し、飛んできたカノンには錆び一つなかった。 原「さあ、何をやってるんだ、早く!」 「お、おう!」 二人は急に嬉しくなった。 これだ、これがアロハマンなんだ。 「俺は、詰める!」 ブルーが原をカノンに足で詰め込み、 「俺が、火を付ける!」 とブラックが点火した!轟音と共に勇ましく打ち出される原!しかし敵は軽々とそれをかわした。…と、何時の間にか走りだしていたブルーが、飛んでいる原に追い付き、足をつかんだ! 「うおおおおおおっ!」 ブンブン降り回すと敵に向かって放り投げた。軌道修正だ。さしもの群体ゴキブリも、これはよけきれなかった。大爆発を起こし全滅する。 久しぶりに顔をそろえた三人。だが皆の顔は晴れやかだった。 「……ただいま」 「お帰り、リーダー!」 「リーダーってだーりー(誰)?」 という原の小粋なダジャレにも、笑って応えられる二人だった。 |
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