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第49話 階楽園エレジー 1989年2月25日放映
ようやく春の気配が本格的に感じられ始めてきた今日この頃、三悪は階楽園にやってきていた。世界征服を目指す者、風流のひとつも解さなくてはならない。去年こっそりここで摘み取った梅の実で仕込んだ梅酒を、満開の梅の花の下で飲もうというのだ。
ハ「お父さん、お母さん、ボクはこんな立派な梅酒になりました」 ソ「ええ話や」 早速梅の木の下に陣取って乾杯をする。が… ソ「…おい、この梅酒、なんかおかしくないか」 ハ「え、そうですか?」 ソ「なんか妙に濁ってないか。壷の底が見えないぞ」 見ると、全くの不透明である。 ハ「…こんなもんじゃないスか?自家製にはよくある事ですよ」 ガッコンガッコン飲みまくるハッシー。 ハ「これでモツ煮でもありゃ最高なんですけどね」 と、酒が減るにつれ液面から何かが頭を出してきた。 ソ「…おい、なんだ、コレ」 ハ「…でかい梅ですかね」 とハッシーがコンコンと壷を叩いてみると、なんと中から梅酒怪人が! 「なっ…これは!?」 驚愕する三悪。 ハ「どうやって入ってたんだ…お前はヨガ行者か!」 ソ「そういう問題じゃないだろ!一体どういう事だ、これは!?」 ハ「そういえば半年ほど前に二十杯ほど盗み飲みした事が…」 ソ「二十杯って…その後どうしたんだ?」 ハ「その辺の廃液入れて誤魔化しましたが」 ソ「アホか!!」 本当は自分も二、三杯飲んで水を入れていたソーヤ(とモリッター)だが、今となっては些細な事だ。それより怪人培養液を飲んでしまった事の方が気掛かりだった。 ソ「どーすんだ、せっかくの宴会が台無しだぞ」 ハ「いや、物事をマイナスに捉えてしまっては何も解決しません。偶然をチャンスに変える生き方が好き。今しか出来ない事ってあるよね。とゆーわけで、この怪人を使って観光客を襲いましょう」 ほどよく酔って気持ちよく弁舌するハッシー(でも、しこたま廃液を飲んでいたわけだから単にラリッていただけという話も)。いちいちもっともなだけにムカつくことこの上ない。 「テメエら、誰に断ってこんなもん売ってんだ!」 「なんだよ、イカやタコ焼きは良くて、イワシはダメだっての?同じ海産だろ」 「タコならともかく、イワシにゃ品がねえんだよ、品が!」 「イワシておけばこの野郎、不飽和脂肪酸をなめるなよ!」 もはや一触即発の状態だ。と、テキ屋が切りだした。 「階楽園の字を並べ変えるってえと、どうなる?」 「?…かいらくえん…いくらかえん…いかくらえん…イカ喰らえ!?」 「そうだ!階楽園はイカを喰うところなんだよ!」 豪快な論理にたじろぐ三人。このままでは負けそうだ。 「畜生、ここは一発アロハパワーで…!」 「待て、一般人にアロハパワーはご法度だ!ここは俺の小粋なジョークでひとつ円満に…」 つい、と前にでる原。 「テキ屋って、とってもステキや」 すかさずタコ殴りにされる原。ブルーとブラックは黙って見ている。 「くそっ、このままじゃ…」 と、向こうで何やら騒がしい。見ると、全身緑色の怪人が暴れまくっている。金をたんまり持った観光客は格好の餌食だ。 「あ、あれは!?」 驚くテキ屋。 これじゃ商売あがったりだ。そこで変身、アロハマン! 「観梅の邪魔をしちゃあかんばい!」 という関西弁だか鹿児島弁だかわからない原のギャグを合図に、戦闘開始! しかし梅酒怪人は異様に迅い。まるで「こうやってると安心するのよね〜」と言わんばかりに走ることをやめない。このままではカノンで狙えず、かといって神器では周りに迷惑がかかる。だが、原にはピンとくるものがあった。 あの怪人からは望まれぬ生を受けた深い悲しみと当惑が感じられる。奴があんなにも走り回っているのは自分の本当の居場所を探し求めているのに他ならない。奴の足を止めるには、奴に居場所を与えてやれば…! 「梅酒怪人!お前の居場所は、ここだあ!!」 思わず振向く怪人。見ると、そこにはイワシをグツグツ煮込む鍋が! そうか…僕の居場所は…… あそこで、イワシの梅煮になる事だったんだ!! 突然、猛スピードでむかってくる怪人。今だ!カノン命中、轟沈する梅酒怪人。三悪はというと、すでにカラオケに行っていた。 イワシ鍋を目指す怪人の喜び輝く瞳が目に焼き付いて離れない原。 あれは…俺だ。そこに自分の居場所があると信じて割り込み先走った行動をとってしまう…。あの走り回る姿に、自分の人生がダブって見えていた。燃え盛る炎が、いつしか自分にも訪れくる破滅の未来を暗示しているようにも思えてならなかった。 「イカもイワシもアロハも、みんな海が育んだものだ。俺達はひとつだ」 「…あんたらには負けたよ。好きに商売してくんな」 めでたく商売を再開する三人。しかしイワシ焼きはとうとう一匹も売れず、挙げ句野良猫に二、三匹持っていかれた。 |
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