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ALOHAMAN IN ETERNAL SUMMER
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第52話
ブルーの記憶を取り戻せ!
1989年3月18日放映


「そんな…馬鹿な!!」 「いいか、よーっく思い出せ!」
 今回、アロハ三人はいきなりピンチに陥っていた。今朝方振込まれたばかりのバイト代をおろしにいったブルーが、金をどこにしまったかを忘れたというのだ。必死になって部屋中探し回り、ブルーの服のポケットも全部調べたがどこにもない。
「だから俺はブルーを行かせるのには反対だったんだ」
「いつ反対したんだよ」
 こうなったらなんとしてもブルーに思い出してもらうほかない。
「ショック療法で行こう。頭を殴るとか」
「脳細胞減らしちゃマズいんじゃないの?完全に忘れるぞ」
「じゃあ原がキスするとか。ショックだぞ、これは」
「死んだってやだよ、俺」 「俺だってやだわい!」
「このアパートに火をつけるってのは?」
「確かにショックだけど…」
「ハートに火をつけるってのは?」
「何言ってんの?お前。…そうだ、自殺しろよ、原」
「ショックじゃないよ、それ。嬉しさが先に立っちゃう」
「お前等なあ…」
 結局ショック療法は止め、催眠療法に切り替えた。
「なんかUFOにでもさらわれたみてーだな」
 五円玉を揺らすこと三十分、目付きが変わらないので分からなかったがとっくに催眠術にかかっていたことが判明、実践に入る。
「まずは一番近い記憶から始めよう。あなたは今日の昼何を食べましたか?」
「…えーと…何か食べたっけ?」
「マジかよ、もう忘れてんぞ」
「ダメだこりゃ…いっそもっと遡ってみよう」
 ブルーの脳裏になにかが蘇ってきた。
「私は…何かの上に寝かせられていて動けない…真上にライトがある…とても眩しい…私の両脇に何か生物がいる…人に近い姿だ…私を覗き込んでいる…一人が私の脇腹に何か埋め込んだようだ…」
「おいおいマジかよ…本当にUFOに連れ去られたのか?」
「宇宙人が財布から金だけ抜き取って戻すのか?すごいスリだな」
「宇宙人にも生活ってもんがあるからな…おい、そいつらの顔はどんなだ?」
「…一人は丸く大きな二つの目をしている…頬が異常に張っていて…鋭い牙が上アゴから三又で生えて…鼻の辺りには萎えたポコチンが…」
「ううむ…なんて恐ろしい化物だ…!」
 視覚化するため似顔絵を描いてみるブラック、しかしその絵は原にクリソツだった。
「…おまえ、やっぱり…」
「やっぱりって何だよ!俺が宇宙人だっていうの!?
 しかし、見れば見るほど他人とは思えぬそれに、無性に切なくなってゆく原。これが俺のルーツなのか…?
 しかし、はたと思い当ることがあった。
「なあ…これってマジで他人じゃないんじゃ…」
「お前、やっぱり…!」 「そうじゃなくって!」
 原曰く、この光景は今朝方二人がブルーを叩き起こしている所と思われるのだ。
「ほらこいつ、すげえ寝起き悪いしさ」
「…そういえば俺、こいつの脇腹に拳ぶちこんで起こしたな」
 ひどい話である(いろんな意味で)。
 結局振り出しに戻ってうなだれる三人。
「…貧乏金なしたーこの事だな」
 そこへ長官から出動がかかる。こうなったら戦いまくって稼ぐしかない!
*        *        *
 出向いてみると、本日の怪人は美人だった。
「こ、これは!?
 女子大生怪人…女子大生本来の風味を損なわず存分に生かして絶妙のハーモニーで仕立てあげたハッシーご自慢の一品だ(本来は女子高生が原則なのだが、ギリギリ十代なのでよしとした)。それはブラックの男をして屹立させるに十分な出来であった。やおら下半身で一計を案じるブラック。
「奴を生け捕りにしよう」 「何!?
「(散々慰み者にした挙げ句)売るんだよ!何せ怪人、しかも女子大生だ。用途は色々、マニアがほっとかないって。俺なら買うね!」
 ならなぜ買わないのか。
「けどまずいだろ…もとは一般人だぜ?」
「一生あの姿のまま生き永らえるよりは、俺達の手で引導を渡してやるべきだ!」
 なんかそうらしいぞという事になり、作戦開始!しかし怪人の魅力があだとなり、ブラックはマイスティックに触れるや否や気を吐いてしまい、ムチを取り出せないでいた。
「他の神器じゃ生け捕れないぞ!カノンは威力がでかすぎるし…」
 そこで閃くブラック。「そうだ原、走れ!」 「はあ?」
「カノンで飛ぶから威力がでかすぎるんだ。走るくらいのスピードなら、ちょうどいい軽さだろう」
 仕方なく実行に移す原。まんべんなくギャグを言いながら両手を大きく振って走り寄ってくる原…そんな目にあえば誰だって恐くなる。キャーキャー悲鳴をあげながら逃げる女子大生怪人。その黄色い声に、追いかけ回す原も俄然興奮してきた。
「こーなったら何が何でもあの可愛らしい耳をギャグで(けが)してやるぅ!!
 今まで経験したことのない悦びに心踊らせる原。ついつい本気になって世界新を出してしまう。
「あっ、バカ!」
 ブラックの制止も虚しく、原の存在意義消滅力は高まって爆発し、怪人も巻き込んでしまった。
「あーあ、やっちまいやがった」 「せっかくの怪人を…」
「…面目ない」
「いや、しかし元に戻っても売れるぞ。何しろ女子大生は使い道があるからな!」
 しかし目を覚ました女子大生は、一目散に逃げていってしまった。
「あーあ…」がっくりくる三人。呆気に取られ何も出来ずにいた三悪もすごすごと帰宅する。
 しばらくその場でうなだれていたアロハ三人、腹が減って何かチョコのカケラでもないかとポケットを探ったブルーが叫んだ。
「あった!!
 何と胸ポケットにバイト代が!アロハスーツのポケットなら失くさないだろうと入れたのを忘れていたのだ。
「どうりで普段の服にはないわけだ」
 失敬失敬、と言うだけのブルーを怒る気力はもはや残っていなかった。


 
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