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ALOHAMAN IN ETERNAL SUMMER
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第55話
ハラコフカノン暁に燃ゆ
1989年4月8日放映


 草木も色づきやうやう春めいてきた今日この頃、アロハ三人は桜川の土手に陣取って花見と洒落込んだ。相変わらず寒風吹き荒ぶ懐から捻出した金は全て酒代に注ぎ込み、ツマミは現地調達だ。ツクシの佃煮、フナの甘露煮が実においしい。
「蛙は産卵前じゃないと味が落ちるんだよね」
「鮭みてーだな」
「…字も似てるしな」
 幸運にも釣り上がった鯉による鯉こくは絶品だった。
「なんか部屋にいるよりなんぼか豪華だな」
「四ツ葉のクローバーなんか浮かべちゃったりして♪」
「おっ、風流だねえ」
「自然って素晴らしいなあ…♥」
 ふと見上げると、匂いにつられてか向こうで三悪がゴザ持って指をくわえていた。
「お前等…いつからそこに!?
「てめえらなんざ木の皮でも喰ってろ!」
「まあ待てよ、ここは桜の美しさに免じて一時休戦といこうじゃないか」
という原の粋な計らいにより、六人は折り好く釣れたナマズの丸焼きを囲んで飲み始めた。
「いやあ、たまにはいいもんですな…こーゆーのも」
 ハッシーの杯に、はらりと花片が舞い降りる。
「ああ…!かくも気高くはかなき花よ、お前は散るからこそに美しい…!たとえるならそれは今にも胸ふくらみかけんとしている小学校中学年女子のやうな…」
「ルイス=キャロルか、お前は」
 と、やおら険しい表情で立ち上がるブラック。
「いや、それは違うぞ!真に花の如きは今まさに熟れんとしている適齢期の女性…つまり女子大生から中堅OLにかけてだッ!」
 俄然火花を散らしだす二人。
「おいおい、ひとつ穏便に頼むよ?」
 他の花見客もぼちぼち増えてきている。しかし二人の議論はますます白熱する一方だ。
「絶対、小学生だ!」
「いーや、女子大生だね!」
「…どーでもいいけど中高生がすっぽり抜け落ちてるなあ」
 論争はピークに達し、感極まったハッシーは思わず花見客を改造してしまう。
「この花見怪人に勝てたら認めてやる!」
 猛然と襲いかかるブラック。しかし酔えば酔うほど強くなる花見怪人はブラックの攻撃をひらりひらりとかわし、隠し芸まで披露した!
「おのれ、こうなったら…!」
 我を忘れたブラック、原の首根っ子をむんずとつかむや、おもむろに呼び出したカノンの中にぶち込んだ!
「ちょ、ちょっと!?オイ!!
 ブラックの手に持った松明が、狂気に歪んだ顔(マスクだけど)を照らしだす。
「わははははッ!女子大生は永遠なり!!
 そして…まさに点火の瞬間ブラックは、悪戯(いたずら)な風が運んだ桜の花びらに鼻先をくすぐられてくしゃみをしてしまった!
 事もあろうか勢いで真上を向いてしまったカノン、そのまま原を垂直に撃ち出した!素晴らしい高みまで昇りつめた原は、そのまま真っすぐ落下してスポッとカノンに命中!すさまじい轟音と共に爆発炎上するカノン!!
 炎は衰えることなく燃え盛り、辺りの桜をこうこうと照らしだした。
「はかない…はかなすぎる……!」
 ブラックはただただ茫然と炎の前に立ち尽くしていた。


 
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