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第66話 死闘 満月の夜 1989年6月24日放映
原がSの洗礼を受けてからもう一週間以上が経ったが、彼は未だカプセルの中で療養中だった。どうも普通のダメージとは質が違うらしく、原にしてはやたらと治りが遅い。あの戦いは結局マグワイヤーが相手ではなかったのでバイト代も入らず、踏んだり蹴ったりであった。
で、その原がふとカプセルの中からブルーに声をかけた。 原「あのさー…」 青「んー、何」 原「最近なんか黒くなくない?」 青「…あっ、ホントだ!」 そういえば先日の蜂事件以来、ブラックはめっきり姿を見せなくなっていた。一度は出撃までしたというのに彼らは今までその事に気付いてすらいなかったのだ。流石にこれは…と二人も心配になってゴミ業者に電話で問い合せてみた。 青「あのー、先日、何か黒いものを回収しませんでしたか?」 業「『黒いもの』って何だい?」 青「…『ブラック』なんですけど」 業「あぁ?」要領を得ないので、似顔絵をFAXで送る事にする。 二分後、先方に送られてきたのは唐突に描かれたタラコ唇と黒光りするナニだけだった。紙の最後に「PS もう少し黒いかも知れません」とコメントがある。 業「あー…何?コレは」 青「コレはナニです」 業「ナニって何?」 青「ナニはナニですよ。分からん人だな」 かくして事件はオクラ入りとなった。 * * とうとう洞窟内の食料が尽きた。苔と水以外なにもなくなってしまった。仕方がなくホワちゃんを食べようと言うと、彼女は必死になって拒んだ。初めて見る彼女の悲痛な表情に、ブラックは驚愕にも似た心の痛みを覚えた。初めて、拒絶されたと感じた。とめどなく後悔の念が押し寄せる。「ごめんよ。もう二度とこんな事は言わないから…」 いつしかブラックはふもとの村の畑を荒らしに行くようになった。 しかし被害が度重なるにつけ農民はついに自警団を結成し、罠を張り、ある満月の夜ブラックと全面対決した。暗闇に慣れていた彼は初めのうちこそ有利に立ち回ったが、さすがに体力の衰えは隠せず、更に月が雲から出てしまうと圧倒的に不利になり、何も出来ずに容赦なくボロボロにされた。その晩彼は、芋の切れ端とかグチャグチャになった人参の葉っぱだけを持ち帰ってきた。 ブラックは己れの腑甲斐なさに泣き崩れた。 「がんばるから…俺、がんばるから…!」 「だからみて!俺をみて!!」 「見捨てないで!もう一人はやなんだ!もう黒いのやなんだよおぉ!!」 恐かった。失いたくなかった。そして二度と戻らないと誓った筈の魚光に意を決して出稼ぎに行く事にした。 自分を見捨て、闇へ追いやった二人の所へあえて戻ったのだ。案の定、それは気まずい再会だった。しかし、ここには彼にしか出来ない仕事があるのだ。 「そうだ…オレは正義の味方なんだ」 |
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