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ALOHAMAN IN ETERNAL SUMMER
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第71話
発見!紅の指輪
〜屁ーの中の懲りない面々〜

1989年7月29日放映


 今や会場では大群衆SMショーが繰り広げられていた。信じ難い光景だった。叫喚地獄とはかくのごときものだろうか。
 もう、我々に彼らを止める事は出来ない。余りに数が多い上に、非戦闘員である彼らを攻撃するわけにはいかないからだ。
「ならば元凶を叩くしかない!」瞬時に気持ちを切り替えたネオは、すぐさまバスターカノンを組み上げマチに向けて発射した!しかしザンベがすかさず間に割って入り、体を張って食い止めた!
「ぐはあっ…いい!いいよおっ!!」これはマチを護ったというよりむしろ快楽本能に従った行為と見るべきだろう。だがさしものザンベもよがりに苦悶の色が見える。何しろ物理的にだけならハイパーハラコフカノンの実に3倍もの威力を誇る技なのだ。
「今だ!」すかさず残りの二人がマチに飛びかかった。さしもの女帝のムチも同時に二人は捌けまい!
 だが、二人は見えない・・何かによって弾き飛ばされてしまった。
「こ、これは…『Sフィールド』!?
「長官の言ってたヤツか!?しかしなんて強力な…!!
 Sフィールド…即ちサディスティック・フィールド!わかりやすく言えば、鞭の届く範囲の事である。その中に入ろうとした物は全て、音速を超えるそのムチの面妖な動きによってシバき出されるのだ!
「し、しかしこの前の奴にこんな力はなかった筈…」
「ほーっほっほっ!やはり紅の指輪は大仏の中にあった!!
「紅の指輪…?それがマチを覚醒させたカギなのか!?
 そう…今や社員軍団総トランス状態で織り成すSMの儀によって生じた巨大な共鳴SM思念…それに呼応した紅の指輪の力によって、マチは完全体となってしまったのだ!
 そして最上階展望室の御本尊の外殻を破って動きだし、光り輝く紅の指輪をかかげて皆の前に颯爽と降り立った影一つ。
「永い間ご苦労だったね、マシーン大皇帝」
「…マチ様、ザンベ様…お久しゅうございます」
 名前の通りに全身がメカの固まりであるその男は、マチの前にかしずき、その手を取ってうやうやしく指輪をはめようとした。
「…あの指輪を彼らに渡してはいけない!!
 すかさず戦闘を仕掛けるネオ!だがマシーンの余りの強力さに苦戦し、他の非戦闘社員を巻き込めない事もあって一時撤退を余儀なくされる。
 それを余裕の表情で見送るマシーン。
「…フム…まだ本調子ではないな」肩をゴキゴキと鳴らす。
「だがいい錆落としにはなった。しかしネオめ…この時代にまで蘇っているとはしつこい奴らだ」
「…ネオだけではないよ、マシーン」 「?」
「本家もだ。この間遭遇したよ」 「奴らが…!?
        *              *
 風に乗って散らばったスーツの残りの破片もなんとか9割方回収できた。夕方までかかって色ごとに分別し、ちょっと丈が短くなったきらいはあるがなんとか元に戻す事が出来た。
 その晩、廃小屋でいろりを囲み祝いの熊鍋を食べる3人。少々アクが強めだが、みそ味をきかせるとなかなかに旨い。
「…そういやブルーも一緒に新技くらってたけど…あれ平気なのか?」
「そういやそうだな…熊でさえ廃人(もとい廃熊)になったってのに」
 そもそも洞窟で俺の心が不安定になっていたのは、ハラコフカノンに打たれていた事が原因の一つにあった。その精神的威力を更に強化したものを食らったのだから、ブルーだってただで済む筈はないのだが…?
 だがそんな心配をよそに、黙々と鍋を食うブルー。
「なんかコイツの場合いつもとかわんねえな」
 しばらくして、屋内の煙がだんだんひどくなってきた。そろそろ換気しようかと思っているうちにみるみるすさまじい量になり、あっという間に火も消えた。
「酸欠になる!」と慌てて窓を開けるが、煙は中からどんどん吹き出している。「火は消えてるのに…?」
 よ〜く見ると、熊肉食ってるブルーの屁だった。
「お前かーっ!!」余りに臭くて即座に嗅覚がマヒしていたのだ。とはいえ目にはしみるし喉にもくるので、煙と感じたというカラクリだ。
 しかし、いかなブルーと熊肉の相乗効果とて生身にしてこの屁の量は尋常ではない。既に屋内は屁雲たちこめ、視界ゼロで呼吸もままならない有様だ。「ひょっとして…これが新技の副作用とか!?
 いくら臭くないとはいえ鼻の粘膜や喉や涙腺をバシバシ刺激しまくられ、苦しいというよりもはや激痛の領域だ。
 堪らずアロハチェンジ!…したら、ブルーもつられてチェンジしてしまい、屁の量がドバンと爆発的に増大した!「うわああああ!!!?
 余りの屁圧に、小屋も絵に描いたように展開した!
 急いでブルーの変身を解除させようとするが、屁の勢いがもの凄くて何かにしがみつくのがやっとの状態だ。
「ブルー!変身を解け!!」との必死の叫びも余りの逆風に流されて届かず、逆に「屁が、屁がァ!」というブルーの情けない声が風に乗ってバッチリ聞こえてくる。思わず泣けてくるのも、屁が目にしみるからというだけではあるまい。

 一方、行方不明の三人を必死に捜索していた智美はネット経由のランドサット画面で雲の吹き出す盆地を見付け、これはと思い現場に急行した。
「すごい…!まさかとは思ったけど…これみんなブルーさんのオナラ!?
 それにしても思ったより凄い速さで屁が積もり続けている。既に盆地全体は5m厚もの屁で覆い尽くされていた。
「念の為にフル装備一式を用意してきてよかった…」
 智美は水中メガネとシュノーケルで身を固め屁界に突入した。

 原とブラックは向かいっ屁( アゲンスト )の中を五時間かけて匍匐前進した末ようやくブルーの変身を解除し、屁を生身レベルに落ちつかせる事が出来た (でもまだ出てた)。命からがら屁界の外に脱出すると、そこでキチンとそろえられた一足の靴を発見した。
「おいおい、早くも自殺者が飛び込んだか?」
「…でもこの靴には見覚えが… !!まさか智美…来てたのか!?
 二人の制止も聞かず再び屁界に飛び込むブラック。もはや視界の全くきかない奥深くまで踏み込んで、意識を失って倒れていた智美を奇跡的に見付けるが、すでに帰る方角を見失っていた。
「俺はアロハ力でまだ保つが、彼女は一刻も早く外に出なければ…!」 もはや迷っている暇はない!渾身のアロハジャンプで今や十b上空の屁境界面から顔を出し、外気を吸い込んで智美に口移しで与える…!
(智美…生きろ…ッ!!
 彼の名誉の為に弁解しておくならば、この時のブラックに邪念はなかった(少なくともあんまりなかった)。
 しかしただでさえ五時間の匍匐前進で体力を消耗していた上こんな事を繰り返した為に、脱出半ばでとうとう力つき、あえなく屁界の底にその身を横たえた。
 薄れゆく意識の中で人影を見るブラック。
「あ…あなた…は…」

 ブルーと原が見付けた時、二人は屁界のほとりで気を失っていた。
 その後一向は屁を逃れて山肌にキャンプを張り、ようやく目を覚ました智美と久々の再開を祝った。すっかり正気を取り戻した三人は、見違えるほどに逞しくなっていた。焚火を囲み、盆地に流れついてからの顛末を話していると、例の新技のくだりで智美からこんな提案がなされた。
「『ワンダ砲』って名前はどうかしら?」
「えっ!?いや、それはその…」
 智美の屈託のない笑顔を見ると、もう名前があるとは言い出せなかったブラック。マジで気に入っている原が妙に恨めしかった。
 翌日になると、盆地の屁はずいぶんとかさが減っていた。おそらく沈殿し始めているのだろう。ヒザ上程度の厚さに落ち着き、朝の光を浴びて金色に輝く屁海を両手を広げて歩くブルーを見て皆がつぶやく。
「その者、青き衣をまといて金色の野におりたつべし…」
 いずれはここも元に戻るだろう。うっすら金色に輝く盆地を後にして、四人は意気揚揚と里に降りた。しかし…
「こッ、これは…!俺達のいない間に、一体何があったんだ!?
 水戸に帰還した彼らを待ち受けていたのは、辺り一面SM一色に染め上げられた町並みだった!!


 
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