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ALOHAMAN IN ETERNAL SUMMER
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第79話
破滅への序曲
〜因果英雄伝説〜

1989年9月23日放映


 智美が物心ついた時には、父親は既に居なかった。母親は王立研究所に勤める科学者で、知的で優しかったが余り家に居る事のない多忙な人だった。仕事ではとても大事な計画に関わっている、という話だった。
 その母も智美が8才の時に仕事中の事故で死んだ。他に身寄りのいなかった智美を、嫌がる伯母が仕方なく引き取った。伯母は母とは違って、冷たくて意地悪な人だったが、あまり家に居ない所は一緒だった。
 そんな家庭環境からか、智美は友達も出来ずいつも一人でいる事が多かった。学校に行くようになってからも周りの子供からよくいじめられていた。だがそんなある日、子犬をかばって近所のいじめっ子たちに囲まれている所を突然現われた青年が助けてくれた。
「たった一人で辛い苦しみに耐える小さな君…。その強さ、気高さを、どうか大人になっても忘れないで」
 それは紛れもなく白馬の王子〜少なくとも幼い智美の目にはそう映った〜であった。その日以来、智美は王子様に、殊にその正義の味方的な振る舞いに憧れるようになった。
 それから数年後、智美はかつて母親の助手だった男、テラに引き取られていった。

 テラは、よく旅をする男であった。それゆえ、この国が以前から根本的な所で荒廃してきている事実をその目で見てよく知っていた。それは国のかねてよりの懸案でもあったのだが、その理由はまだよく分かっていない。どうにかしてこれを科学で解明し、解決する事は出来ないものか…。テラは日々、そのための案を巡らせていた。
 そんなテラが久しぶりに家に帰ってきた時、智美は彼を自分の研究室に招き入れ、そこで一匹のリスを紹介してみせた。それはとても信じられない光景だった。
「リ、リスが…人になついている…!?
 肩に乗せたリスに餌をやりながら智美が言った。
「今現在、この大陸に居る動物のほとんどがなんらかの凶暴性を持っているけれど…過去の文献を見ると、かつてはそうではなかった様子が描かれているでしょう?彼らの多くは元来温厚なんです。リスなんて愛玩動物だったみたいですよ」
「し、しかしそれは何百年も前の事だ。君は一体どうやってそのリスを…!?
「…一切のイデアを遮断した空間で育てました」
 イデア…!!母親も研究していたそのテーマを、この娘は一体いつのまに…!?
「病んでいたのはこの世界…世界の奥の潜象世界、世界の『意識』そのものなんです!」
「…そんな事が…!!
「汚れているのはイデアです!この世界そのものが汚れたイデアの上に成り立ってるんです!」
 それは前文明のツケであった。古代において発達したイデアを操る技術の乱用が、今もなお爪痕を残してこの世界を混沌に貶めていたのだ。動物だけではなく、人心もまた毒されている。だから、表面的に統治しようとしてもダメだったのだ。
 驚愕するテラ。自分が旅をしながら追い求め続けていたこの世界の真実を、この15才の少女はたった一人で、しかも家に居ながらにして掴みかけている…!!
 今までテラには、智美を科学者にする気はなかった。やはり科学者である智美の伯母が気掛かりな事もある。だがなによりも、余りに母親にそっくりな智美の姿が、立ち振る舞いが…テラには辛かった。
 家で智美の姿を見ているだけでも、しばしばはっとすることがある。まして、それが研究室内であれば尚更…。
 だが、それにもましてテラには智美の底知れぬ才能を前にしてそれを見過ごす事が出来なかった。テラは、智美を最高学院に飛び級させる事にした。元々優秀な成績だったので、手続きは簡単だった。
 そして最高学院を卒業し、自らの希望もあってテラの助手になった智美は母と同じ職場で働く事になった。そこでかつて母がしていた研究と、母の遺した史上最高の人造人間M−666に出会った。
 は正確で、迅速で、無駄口をきかない優秀な助手だったが所員は皆、彼を単なる作業端末としか見ていなかった。その孤独さが智美に親近感を覚えさせた。

 案の定、智美の伯母は智美の優秀な才能に嫉妬した。悲しむ智美。だが、智美が気を使えば使うほど、それはかえって伯母の嫉み、恨みを買うだけだった。いや…伯母だけではない。若くして余りにも抜きんでた智美の才能は、その清廉な人柄とあいまってかえって他の研究者達との人間関係を疎遠にしていた。
 …智美は、今だに孤独な子供時代から抜け出せずにいたのだ。
 そんな智美の様子に、テラは悲劇の再来を恐れた。テラは、智美の母の死因が何だったか薄々感付いていた。だが、推測にすぎないものを智美に告げて、余計に悲しませる事も出来ずに一人で悩んだ…

 ある日、M−666が智美をある場所に案内した。そこは十年前に智美の母が参加していた計画、コーリングプロジェクトの最終実験地であり、同時に彼女が死んだ場所でもあった。
 その計画は、前文明の遺産『パンドラシステム』を利用して『統治』のイデアを降臨させ、理想の指導者とする…そして荒廃したこの世界に理想の地を現出させようという、いわば人類の悲願であった。
 そのイデアの憑代、理想の指導者の器として作られたのがM−666だったのだ。だが機械の人格は結局イデアと融合する事ができず、計画は失敗に終わっていた。
「ねえ、M−666…貴方が皆からよそよそしくされているのは、そのせいなのかしら」
「仕方のないことです。私は所詮機械なのですから」
「…さびしくない?」 「その言葉はよく分かりません」
 しばらく間を空けてから智美が言った。
「ねえ、貴方に名前を付けてもいい?」
「私にはすでに名がありますが…」
型式( コード )じゃなくて名前( ネーム )よ。名前を付けられたものにはなんにでも魂が宿るの。貴方は今日から『マシーン』よ」
「マシーン…ですか」
 彼が少し戸惑ったように見えるのは気のせいだろうか。
「そうよ。名は体を表しているのが一番いいの。『機械』は別に卑下する事じゃないわ。貴方には強さと気高さがあるんだから!」

 そんな智美の孤独をよそにやがて研究は進み、生体憑代として国中から厳選された善き男女一組にイデアを降ろすという計画が立案される。だが万全を期した筈のこの計画も、参加していたある科学者の邪念によって二人に『SM』のイデアが降臨してしまうというとんでもない事態に陥った。
「でも後悔はしていない」メガネを無意味にきらめかせつつ、開き直った陽気な口調でその科学者は言った。「今しか出来ない事ってあるよね」
 そうして生まれてきた『ザンベ』と『マチ』は産声代わりに、SMによってこの世界を統治する、と宣言した。勿論阻止しようとする智美たちだが、戦闘力をもたない研究者達ではまるで歯が立たない。銃器を持ち出してまで徹底抗戦するテラとマシーンだったが、それさえも虚しく…二人はただただ歯噛みした。
 やがて智美の伯母が寝返ってDrローズとなり…さらにはマシーンまでもがザンベの元に走ってしまった!こうして最強の親衛隊「グルザー軍団」が結成され、国の正規軍も歯が立たぬまま、大陸中を席巻した。教会は乗っ取られてSMに改宗し、王室も風前の灯となってしまった。

 ザンベとマチは自らのイデアの力を全世界へと波及させるために、ロ
ーズに命じて巨大な二体の偶像を建造させ始めた。これらを通じて増幅されたS/Mフィールドにより絶大な洗脳効果を大陸規模で発揮できるのだ。
 それらの全てを支える動力源には、この日の為に高純度に精製された結晶オリハルコン『紅玉』と『青緑玉』が使用された。この二つの宝玉はそれぞれマチとザンベの波長に完全に同調しており、二人の精神作用によって膨大なエネルギーを叩き出した…!

 この最悪の事態に直面し、一部の学者達が前文明の伝説にある救国の英雄、『アロハマン』を復活させようと文献や遺跡を研究し始めた。
 その伝説によれば、この大陸はその昔今よりもっと大きく、そこには今よりもずっと進んだ文明が栄えていたという。
 その文明がある日大地の神の怒りに触れ、大陸ごと黄泉の国(「地底」の意か?)に一度飲み込まれてしまった時、それを再び地上に持ち上げたのが超神の使い『アロハマン』だというのだ。その時に大陸は元の半分以下の大きさになり、また再び地上にあがった時世界の様子は一変していたという。
 この伝説をさながら裏付けるかのように、現在もこの大陸の地下には空洞化したマグマチェンバーが大きく広がっていて、そのほぼ中央にある巨大な三本の岩柱がそれを支えている。創世神話にある三柱の神…それは死してなお大陸を支えている三人のアロハマンだった。現文明の初期からここが地下神殿として祭られている記録があり、詣でた者は三本の柱とそれぞれ同化したアロハマン(おそらく後世になって彫られたものだろう)を見る事が出来る。
 無論、今まではそれは単なる神話と思われていた。だが現実にザンベとマチが出現した今、それはもはや神話やお伽話ではありえなかった。なぜなら…伝承はアロハマンを超神の使いと呼ぶだけではなく、『イデアの体現者』だとも伝えているのだ!
 テラ達は、アロハマンは何度も転生しているという記述を頼りに、この時代での生まれ変わりがいないかどうか捜索を開始した。

 とうとうアロハマンは見つからなかった。よしんば彼らが今の時代に居たとして、しかもそれが闘うのに適した年令であるという可能性は元々低かったのだ。だが『イデアの体現者』という面からのアプローチでは今までのパンドラの扉とイデアの研究の成果を応用する事が出来、人工的に疑似『アロハマン』を再現する事に成功した。魂に人工人を埋め込んで、イデアの力を引きだしその能力を飛躍的に向上させる、いわば改人間…。
 だが、なぜかそれは智美でしか成功しなかった。これ以上智美を犠牲にしたくはなかったテラであったが…この危機を前に悠長に国中の人間を試験している時間はなかった。そしてこれは智美の望む事でもあった。かくして智美は改相手術を受けて念願の正義の味方となり、『アロハマン』の名を取って、『アロハホワイト』と名付けられた。
 しかし、ホワイトの戦闘力はお世辞にも高いとは言いがたかった。マチ達に抗するには遠く及ばず、辛うじてグルザーに対して矢面に立てる…といった程度であった。勿論それでも一般人とは比べものにならない力を持ってはいるのだが、ローズによって冷酷な生体実験を繰り返したグルザー側の方が、改相技術も格段に上だったのだ。
 小さな戦いを繰り返して、はじめは多かったグルザー軍団の幹部を徐々に減らしていったが正規軍の損害もどんどん拡大し、そしてホワイトも次第に疲弊していった。

 数ヵ月後の地下巨大空洞の岩窟神殿での戦いは、正規軍側にとっての最終防衛戦であった。正規軍はことごとくやられ、ホワイトも絶体絶命の危機に立たされたその時に、想像もしなかった事が起きた。なんと御神柱から伝説のアロハマンが復活し、危機を打開してくれたのだ!三人の魂は、生まれ変わる事無く何百年もの間ずっと柱に留まっていたのだ。そして智美を直接護った、その人は…
「大丈夫かい?…俺の名は『ブラック』。君は…?」
「わ、私はホワイト…いえ、智美…」
「智美か…いい名だ」
 すっくと振り向いた彼のシルエットは、逞しい黒馬にまたがっていた。
「智美…たった一人で、辛い戦いによく耐えたね…」
 朦朧としていた智美には昔会った白馬の王子と彼が重なって見えた。 馬だと思ったのは、実は馬並みの一物だったが。「ハイヨー、汁棒(シルバー)!」 救世主として正規軍に迎えられる三人。智美はアロハブラックを慕い、憧れ、その後の二人にはほのかなロマンスさえ生まれた…
 やがて三人のブレスとスーツの研究に基いてネオアロハマンが開発され、ホワイトも強化されよりアロハマンに近付き、更にテラも自らを改相する事に成功した。そしてようやく設立にこぎつけた正規軍量産型改相人間部隊を指揮した。

 正規軍が強化されたことにより、戦闘は一気に激化した。
 しかし依然正規軍側の主力であり象徴でもあった本家アロハマンは余りに長い間石になっていた事とアロハスーツの期限が切れかけていた為に、アロハパワーを使い果たすにつれて手足の先からだんだんと再び石化していった。様々な処置が講じられたが、どうしても進行を止める事が出来なかった。苦悩する智美。
 それを嘲笑うかのように、遂に完成する二体の巨神。彼らが目指すのは大陸中央の王家の神殿…そこを起点に、全世界にSMの波動を放射するつもりなのだ!全力をかけ、阻止しようとする正規軍!
 だが、二体の巨神の力は圧倒的だった。たちまち大陸中が火の海となる。壊滅する正規軍、重傷を負って戦線から脱落する智美…もはや、最後の希望は石化の進行したアロハ三人しかいない。
 燃える神殿の中を闘い上がり、いよいよ最終決戦というその時、レッドとブルーはブラックを神殿の外に突き飛ばして言った。
「お前には帰らなくちゃいけない所があるんだろう?」
 突撃した二人は自らの命と引き替えにザンベとマチの魂を結晶オリハルコンの性質を利用して封印し、自分達も力尽き石化して崩れさった。
 余りに大きすぎる犠牲を払って、ようやく戦いは終結を見た…

 それから数か月が過ぎたが、とうとうブラックが還ってくる事はなかった。泣き暮らす智美と、それを励ますテラとの間に愛が生まれるだけの時間が既に経っていた。さらにあの幼い日の白馬の王子はテラだった事が判明した。その頃、彼は白いバイクに乗って諸国を旅していたのだ。智美はテラの求婚を受け入れた。
 教会で結婚式をあげる二人。友人たちの祝福を受けながらテラとキスを交わしたその時…満身創痍のが帰ってきた。
「ブ…ブラック…!!!?
 事の成り行きを目のあたりにしてブラックは黒柱化( ブラックポール)した。
 もはやブラックの体で全く石化していない所は・・そこだけであり、最後の支えを失った彼の心はそこへ逃げ込んだのだ。
 そして…黒柱はそのまま石化した。
「あ…ああ…!私は…私はなんてことを…!!
「智美!しっかりしろ、智美!!
「いやあああああああーーーーーっっ!!
 その時、突然大きな地鳴りが響きだしたと思うと、大地が割れ始めた。
 もはや死んだと思われていたマシーンが、残ったグルザー軍団を率いてザンベとマチが封印された結晶オリハルコンの指輪の保管庫を急襲し、更にパンドラシステムを作動させようとして暴走させてしまったのだ!
 崩れ落ちる天井から智美をかばおうとしたテラがその下敷きになってしまう!悲痛の叫びをあげる智美。テラをなんとか緊急避難所の救護班まで連れていくと、ウエディングドレスを着替える間もなく、ある場所へと向かって走りだす。
「ま…まて…智美……!」
 智美は元々イデアの体現者だった。本家アロハマンを研究した時に、それが分かったのだ。そして今や『パンドラの扉』まで潜りそれを再封印できるのは彼女しかいない。分かっていた事だが、テラは出来ればそうしたくなかった。しかし万一に備えてパンドラシステムを連結した冬眠装置だけは作られていた。
「私が…今度は私が人柱にならなきゃ…」
 自らカプセルに収まり、装置を作動させる智美。
「そう…白柱に( ホワイトポール)!!
 こうして智美は、扉の守護者になった。
 智美は国を救ったのだ。
 その国の名は…アトランティス。

◇  ◇  ◇

「殺してしまった…私が…私自身が、ブラックを……!!
 悲しい記憶…余りに重すぎる罪の十字架。
 忘れなければ心が堪えられない。だが忘れてしまう訳には行かない。魂は押しつぶされ、引き裂かれ…記憶は扉に磔になる。
 そして、智美は目覚める事無く扉を守護し続けるつもりであった。
 永遠に…
 しかし、心は…心だけはブラックの呼び掛けにより身体と共に目覚めてしまった。…いや、目覚めずにはいられなかった。
「私…ブラック…ブラック!!」涙する智美。
「忘れてしまっていたなんて…私…なんて酷いことを…なのに…!」
 泣き崩れる智美。立たせようとする社員たち。
「こんなの嫌よ…!私…私は…!!
(また逃げるの?)
!?
(あなたはかつて現実から逃げ、自分の罪から逃げ…そして記憶(おもいで)からも逃げた)
「……!」ばくばくと激しく波打つ心臓。
(頭では制御できない、絶対的な心の悲しみが在る事を知り、そんな現実に対抗する為に、あなたは一切の感情を持たない理性だけの人格、『ホワイト』を創造し、自分は内に逃げた)
「だけど…だけど『私』は……、『私』は…」
(今のブラックでさえ、逃げずに償おうとして闘っている。…なのにあなたはまたも逃げるの?何も知らないフリを続けるの?)
「……」
(…記憶が戻った今なら、あなたの言っていた事も…あなたの気持ちも、少しは分かる。私達は元々一つだったんですものね。でも…それでも、私は戦うわ。たとえカケラだろうと何だろうと関係ない。戦わなければ進めない…ザンベもグルザーも倒せない!私は、前へ進むために生まれたのだから!!
「…!」あくまで戦い続けようというホワイトの気迫に息を呑む智美。
 次々と起こったあまりに苛酷な出来事に挫けてしまっていた自分の心。だが今の自分に本当に必要なのは、ホワイトのこの闘志なのかも…
(智美…身体を借りるわよ) 「え…!?
(たとえあなたがなんと言おうと…私は…戦う!!
「あ…待って…!」
 沸き上がってくるホワイトの力に押される智美。今や、智美に抗う力はなかった。身体をホワイトが支配する…智美の身体が変身する!
 今やアロハホワイトに変じた智美の身体は、彼女を取り巻いた戦闘会社員たちをHフィールドで弾き飛ばした!!

「うおおおおおおおおおおおおおッッ!!!!!!
 黒槍を手にしたブラックはまさに鬼に金棒の如くそれを振り回し、狼社長を圧倒した!強い強い! 「そ…そんなバカなでゲフッ!!
 真正面からぶちあてた黒槍を、渾身の力をこめて狼社長ごと潜象世界の彼方へ投鏑する!!
「…もはや回収不可能だ。狼の心も二度と戻ってはこれまい…」

 皆の心が潜象世界から帰ってくると、敵の戦闘会社員は全滅していた。その真ん中にぼんやりと白く光ってアロハホワイトが立っている。
(もういいわ、智美…身体を返すね)ふっ、とへ引っ込むホワイト。
 変身が解ける。とうとうホワイトが、覚醒している時の自分( ともみ )の意志さえ超えて動き始めた…。呆然とする智美。
 そしてふと、現象世界に戻ってきたブラック達の存在に気付く智美。
「あ…」
 ブラック…。先代ブラックそのままの姿…。自分を愛してくれたブラック、それを裏切ってしまった自分、黒柱化したブラック、白柱…
 それを目覚めさせた今のブラック、一緒に暮らした楽しい日々、不安な日々、自分を襲ったブラック、必死で頑張るブラック、智美のために闘うブラック、黒柱化したブラック…
 …とりかえしのつかない日々。
 とりかえのきかない心。
 かけがえのない思い出…
 長い長い沈黙のあと、つうっ、と涙が智美の頬を伝った。
「…お帰りなさい…」 「…うん……ただいま」


 
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