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ALOHAMAN IN ETERNAL SUMMER
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第80話
暴かれた真実 破かれた友情
1989年9月30日放映


 要塞崩壊によって思わぬ大ダメージを被ってしまったグルザー軍団。それまでの戦いを通じて幹部の大半が既に倒され、狼社長も心が戻らず廃人状態のままであった。事ここに至って、マシーンはザンベとマチの御前へ召還された。ひざまづいたきり、一言もないマシーン。
「…腑甲斐ないな、マシーン」 「…は…」
 一連の失態の責任を追及され、マシーンは作戦指揮権を剥脱された。それを待っていたかのように、ローズが前へ進み出る…。
「ザンベ様、マチ様…ここに必ずや強力な戦力となる者達を用意しました」そして進み出てくる三つの影。驚くなかれ、その正体は…!!
「おお、これは…!」と目を見張るザンベ。
「フン…やけにいいタイミングではないか、ローズ。…よもや今まで出し惜しみをしていたのではあるまいな?」
「滅相もございません、マチ様。彼らは今日ようやく・・修理が完了したばかりでして…」
「まあ良い…指輪奪回作戦の全権はそなたに任す。そやつらの威力、とくと見せてもらおうか」 「ハハッ、有り難き幸せ…!」
 恭しく礼をして退室するローズと三つの影。マシーンとすれ違いざま、にやりと笑う…
 マシーンは相手にせずに見送った。「しばらくは好きにさせるさ…」

 智美は、よみがえった自分の記憶について何も語らなかった。
「ごめんなさい…後で必ず話すから」
 智美は、自分の中でもまだ気持ちの整理がつかず、どうしていいか分からないのだ。そんな智美の様子に、自分に対する拒絶の壁がなくなった事に安堵しつつも、心配せずにいられないブラック。
 そんな雰囲気を打ち消すかのように、テラがSM要塞跡に再潜入しようと言い出した。内部蜂起の際、ミミが要塞内のある部屋でカプセルに入った三体の新怪人を目撃していたというのだ。しかもミミによれば、その怪人は「アロハマンそっくり」だったという…。
 もしや偽のアロハマンが造られていたのか!?一同は要塞跡に再び潜入し、ミミちゃんの案内で件の現場に到着した。だが、怪人製作用カプセルは割れていて既に空だった。
「フム…。もう回収されたか、それとも例の屁雪崩で壊れたか?それにしては…」 「…!誰だ、そこに居るのは!?
 いつのまにか、戸口の所に三つの人影が立っていた。そしてそれは…
!?ま、まさか…ネオ!生きていたのか!」
「そうか、お前等も同じ情報を得て…!」
 再会を喜ぼうとするアロハマン。だがその時テラは例のカプセルが・・・・内側から割られている事に気が付いた。 「いかん!ネオから離…」
 どぎゃん、と先制の一撃を食らって吹き飛ぶアロハマン!
 復活したネオは、なんと敵になっていたのだ!!信じたがらない三人。しかしネオはリモコンによる爆破装置を使って要塞の入り口を塞ぐと、要塞中の床に沈澱した屁に火を付けた。
「しまった、閉じこめられた!!
 たちまち要塞中に火が回り、焦炎地獄となる。脱出しようにも、ヘタに手荒な真似をして沈澱した屁を巻き上げれば大爆発する!
「君達はこのまま我々と運命を共にするんだ」
「やめろ!やめるんだ、1号!」 「…?」
「2号、3号!私の命令が分からないのか!?」 2・3!?…」
 テラの叫びに、ネオが不思議そうにふりかえる。
「お前は、誰だ…!?
 くう、と歯噛みするテラ。
「やはりプログラムを入れ替えられたか…!」
「…プログラム?」と原が問うた瞬間、彼はネオ一号に捕まっていた。
「戦闘中にどこを見ている!」 青黒「は、原!」
 そしてブルーとブラックもたちまち捕まる!
 なす術もなく、炎の中で首を締め上げられる三人。
「どうした君達、何故戦わない…腑抜けたか!?」「ぐう…!!
(智美…代わって!)とホワイトがに出てくる。
「まって!彼らは…」
 だが、制止しようとする智美を押し退け浮上するホワイトの意識…変身してゆく智美の身体!
「敵は…倒す!!」 (まって!…やめて!!
「甘い事を言わないで、智美!」
 だがまさにその時、智美と同じ趣旨の台詞が原の口からも発せられた。
「やめてくれ、ネオ!お前達とは戦いたくないんだ!」
 ネオが、智美と同じ反応をする。
「甘い事を…それがお前達の正義か?それで…世界を救える気か!?
「世界を救って…お前達も救う!!
「…!!」一瞬、ぴきゅーんと反応し、その動きを止めるネオ。その一瞬の隙をついて反撃し、辛くもネオの手を逃れるアロハ三人。
「これは…!!」 「なぜ…ネオがあんなにもあからさまな隙を!?」 その時、留守番に残した筈のホルスがどこからともなく現われた!
「一体どこから…出口があるの!?」 「よし、脱出だ!」
 だが、さっきの反撃の際についたネオの傷口からちらりとのぞいたメカがアロハ三人の目を釘づけにした!
!!お前…まさか!?」 「お兄ちゃん達、早く!」
 ひとまず脱出する五人と一匹。
「愚かな…」燃え盛る炎の中に立ちながら、先程のアロハマンの言葉を噛み締めるネオ。「…そんな不合理な事をいう連中は我々の手で引導を渡さねば気がすまない!」
 怒りにスペック以上のパワーを発揮し、助からない筈の大爆発の中から奇跡的に生還してくるネオアロハマン。
 マシーンはその様子をモニターで監視していた。
「あの反応は…まさか、『男闘呼( オトコ )回路』…!?バカな!あれは結局未完成だった筈…第一、あの男がネオに組み込んだりする筈がないんだ。それがなぜネオに…!?
 面白くないマシーン。事情がどうあれ、『男闘呼( オトコ )回路』が存在するという事実は、即ち智美の母が…マシーンを造った女性がマシーンを否定したのに等しい。心をもたない「機械」は、所詮機械でしかない、と…
 現にブラックは、勝てないはずのマシーンを一度圧倒している。
 そして今、ネオも絶対生還出来ない筈の情況から帰還している…
 心…心。全て「心」の為せる奇跡だ。マシーンは低くつぶやいた。
「やはり…心がないとダメだというのか…!?

 命からがらSM要塞を脱出した一同。
「一体どういう事なんだ!?ネオは改造されたのか!?
「…ひょっとしたら偽物だったのかも…」
「彼らは正真正銘の本物だよ」予期せぬ発言に思わず振り向く三人。
「…彼らは元からアンドロイドだったのさ」 「そんな…!?
 その時、突然ムチの一撃が彼らを襲った!
「ぐわあっ!」背後からのローズの不意打ちに、態勢を崩す一同。
「ほーっほっほ!自分の作品に襲われた気分はどうだい、テラ!?
「『作品』…!?
「やはり…ネオを復活させたのはお前か、ローズ!」
「フ…よくあそこから脱出できたものね。でもダメージを負ったその体で一体どこまで持ちこたえられるかしら?」
 ローズは始めから多段作戦を用意していたのだ。歯噛みするブラック。
「最初からヤツの術中にはまっていたのか…!」
「ごちゃごちゃ言ってても仕方ない…いくぞ!」 「応!!
 だが、そこら中から一斉に信者の群れが湧きだして、ローズをかばう形に陣を組んだ!どう攻撃しても信者まで傷つけてしまう…これではローズを攻撃できない!
「くそ…どこだ、ローズ!」信者の群れの中にローズを見失う三人。
「いかん!奴の狙いは…」
 何時の間にか智美の背後に回り込み、イバラの長ムチを振り上げるローズ! 「死ねえぇ!」 「くッ…!!
 すかさず反撃しようとするホワイト。だが…
(やめて!!あれは…私の伯母さんなのよ!) 「…智美!?
 思わぬ智美の強固な抵抗により、変身が解けてしまうホワイト!
 そして生身となった無防備な姿にムチが襲いかかる!
「智美…!?」 「智美ーっ!!
 すかさず睾丸鞭を取り出そうとするブラック。だが智美を襲ってしまった・・あの出来事が脳裏にフラッシュバックする!
「うわああああああ!!」竿はピクリとも動かなかった…
 そして、生身でローズのムチを受けてしまう智美!
「あああああっ!!」 「とっ、智美ーッ!!
 身悶えする智美からムリヤリ指輪を奪うローズ。
「ヒヒヒ、やっとこの手に…ギャアッ!?
 ローズの手に噛みついて指輪を取り返すホルス。
「この畜生…またお前か!」
 ミミの所へ駆け寄るホルス。ミミはホルスを抱えて懸命に逃げるが所詮は子供、いくらも行かないうちに信者に捕まってしまう。しかし…
戦「ダメです、ありません!指輪を飲み込んでしまってます!」
一同「ミ、ミミちゃん!?
「バカだねえ、それならお前ごと連れてくだけの事さ!」
 ミミをさらい、ついでに智美にトドメを刺そうとするが、ホルスにからまれて腰が引け、「フン…用は済んだ」と撤退してゆくローズ。
「ミミちゃん…ミミちゃーん!!!」追って駆け出そうとする智美。
 だが…次の瞬間、彼女はばったりと地面に倒れた!
「智美!?…智美〜ッ!!

 テラに看てもらっている智美の脇で、ブラックは勃たない自分を責めていた。「畜生!!あの時キチンと俺が勃てていれば…畜生っ!!
「智美…どうして変身を解いたりしたんだ!?
「…ホワイトになるのが恐いの…!」智美の体は震えていた。
「…・・彼女は…敵なら誰でも倒そうとするわ。たとえそれが友人でも、肉親でも…!」 「……」
「確かにそれは『正しい』のかもしれない…でも、もうイヤ!イヤなのよ!!そんな事で人を傷つけるのは…大切な人を失ってしまうのは!」
「…!?」智美の過去を知らないために、彼女の言葉の真意をはかりかねる三人。そんな彼らをよそに、テラは厳しい瞳を智美に向けた。
「…その様子では、ほとんど眠れていないのだろう、智美…」
 ハッとする三人。たしかに最近の智美には疲労の色が目立っていたのだ。そして、それは……
「眠れば…意識を失えば、私が…私でなくなってしまう…!だから…」
 ホワイトになるのが…自分が自分でなくなるのが恐くて、気絶はおろか眠ってしまう事すら出来ずに、智美は一人苦しんでいたのだ。
「…そうか…」テラは、智美をテントに運んだ。

 しばらく経って、テントから戻ったテラは重々しく口を開いた。
「…智美をホワイトにしたのは、私なんだよ」
「…テラ!?」余りに突然の、意外な告白に目を丸くする三人。
 テラは智美を改した経緯と、それがどんな影響を及ぼすかを語った。 初期型の人工人の副作用と、苛酷な経験による人格崩壊…そのために智美は二重人格になってしまったと推定される。
「どうして…そんな危険な手術をしたんだ!」
「…『アロハマン』を再現する為には、二つの方法が考えられた…」
 ひとつは人工人核を埋め込み、魂を改相強化した人間がアロハスーツを着る事。そしてもうひとつはアンドロイドにオリハルコン動力炉を搭載する方法…。どちらも貴重なオリハルコンから生み出される超絶的な感応エネルギーが肝だ。普通の人間がスーツを着てもたいした効果は得られない。
 テラはあくまで機械派だった。それは先輩だった智美の母の影響も大きかったが、とにかく「人」を…「心」を使うのは余りにリスクが大きいと考えていたからだった。一人(数人)の人間に全てを委ねる事になるし、その人を危険にさらす事にもなる。制御が困難で、必要な時に力が得られる保障もない。
「だがあの時点ではネオを生み出すのに十分な技術がなかった。安定した高出力の動力炉を作る事が出来なかったんだ。しかし戦況は逼迫していた。…選択の余地は…なかった」頭を抱えるテラ。
「分かっていたのだ…危険な事は!なのに…私は…私は智美を…!!
「…!!」察するに余りあるテラの苦悩に、絶句するアロハマン。
 これが…テラの背負った十字架なのだ。
 ブラックは、以前にテラが語った言葉を思い出していた。
(償って…償いつづけて…それでもなお償って…!)
「テラ…あんた…」
 しばし言葉につまるが、やがて一言一言を確かめるように問い掛ける。
「…でもさ…ホワイトって、ザンベ達を倒すのが目的の人格…なんでしょう!?だったら、奴らを倒せば一つの人格に戻るかもしれない……そうだよ!智美の調子が戻ったら、早速……」
 テラは大きく、ゆっくりとかぶりを振った。
「智美はローズの毒に冒されている」
「…なんですって…!?
「今は薬で眠らせている…ホワイトさえ出てこれないくらい深く…」
「それじゃあ…智美は!?
「…もう戦えない。いや、それどころかこのままでは命さえ…」
「そんな…!」余りに酷い事実に、三人の顔が蒼白になる。
「だが…考えようによってはこれでよかったのかもしれないな」
「テラ、あんた!?」あまりの言葉に、ブラックが抗議しようとした時、テラが小さく言葉を続けた。
「智美は十分戦った…十分すぎるほど戦って、永すぎる時間を生きて、もはや心も身体もボロボロなのだ。だが…智美はもう闘えない。闘わないですむのだ、だから…!!
「テラ…」言葉を失うブラック。テラは静かに腰を上げた。
「智美を見舞ってやってくれ…今の私にはもうこれ以上、何も出来ない」
 去ってゆくテラ。残る沈黙…
 いたたまれず、小石を川に投げ込む三人。ぽちゃん、と音を立てて沈む小石…
「二重…人格…!?
「俺達…智美の事をなんにも分かっちゃいなかったんだな…」
「…『二人の自分』…か…」今の智美に己を重ねるブラック。
 もう一人の自分から逃げようとして「戦わない」事を選んでしまった智美。
 もう一人の自分から逃げようとして「勃てない」事を選んでしまった自分…
 だがそれが、かえって苦しい結果を生んだのだ。
 そのせいで、智美は毒に置かされ、ミミも…指輪も……!!
「畜生…!!」どぼん、と川へ石を投げ込むブラック…!

 ブラックは、テントに智美を見舞った。ローズの毒が回ってきたのか、それともホワイトの存在に恐怖するのか…智美がうなって、身をよじる。
 智美の手を握るブラック。…それだけしか出来ない自分に、ぽろぽろ涙がこぼれ落ちる。「…智美……!!
 ブラックはどうしていいか分からなかった。
 智美は倒れ、ネオは敵になり…ミミと指輪まで奪われてしまった。
 これから、一体どうすればいいのだろうか…


 
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